人生の静と動が、光と闇で絵画のように紡がれていく。
陰と陽、黒と白、海と空、男と女、父と母、心と体、そして生と死…
決して交わる事のない、それでいて互いが無いと成立し得ない、相反する様々なモチーフ。
性や国籍、言葉や環境…あらゆる境界を越えて、
佐藤監督の優しい眼差しと穏やかなタッチがその苦しみも悲しみも、
なだめていってくれる。
――清水崇(映画監督)
“過誤”というもうひとりの自分から逃げ続ける女。 寄辺を失ってもなお誰かを追いかけたい男。 暗い影を背負った物語のはずが、最後は清々しい風が吹く。 息苦しさの先に見える光。その通り抜けの良さが癖になる。
ラストカットは何度見ても色褪せない。
――向井康介(脚本家)
自分は間違った選択の「成れの果て」なのでは、と思う時がある。おかした過ち、酷い言葉、目を逸らし何も行動出来なかった瞬間、、、そんなもので形作られていると。
自らを肯定できぬままアジアをたゆたっているふたりが傷だらけゆえ離れそれでも近づこうとする様を見ていて俺も同じだ、でも、だからこそ転びながら行くしかないんだよな、と気持ちがスッとした。
――川瀬陽太(俳優)
佐藤監督の作品を初めて観たのは20年前。きめ細やかな演出の中に、突然ハッとさせられる瞬間があり、今でもハッキリと記憶に残っています。そしてその繊細でありながら、観る人の心に忘れられない衝撃を与える演出は「湖底の空」で完成の域に達していると感じました。
――本田隆一(映画監督)
オープニングから見逃すなかれ。そこには、この映画のテーマや全てが、見事に映像で表現されている。佐藤智也監督はゆうばりの星だ。
――塩田時敏
(映画評論家・ゆうばり国際ファンタスティック映画祭プログラマー)
安住の地を求めて彷徨う現代の若者たちと、それでも前を向くエネルギーと希望のメッセージ。
日本と韓国、中国を行き来しながら自分の中のもう一人を通して真の自分を探していく主人公の姿は、触れ合いが難しくなり一緒にいることの意味がより大切になってきた今、心に大きく響くでしょう。
――モ・ウニョン
(プチョン国際ファンタスティック映画祭プログラマー)
過去の傷が出会いを通して変化していく様子。美しい映像と繊細な心理描写で国と言葉の壁を軽々超えて心に届きました。
――工藤じゅんき(ラジオパーソナリティー)
深く、水の中に閉じ込めた秘密。
先が全く読めなく息を吸うのも忘れる。
あなたは空なの?海なの?
深い湖の底に広がる、大空。
文化、言葉、心が交差しあっていく光の中に宿る美しき闇。
共存しあっている生命を感じ、私は空と共に泣いた。
生きていてね、大空へと。
――サヘル・ローズ(俳優・タレント)
私自身、一卵性の双子として生まれて、自分という存在について幼い頃から考えてきました。「個」を作り上げるのは何だろうか。国境、性別、年代なども超えて「個」について考えさせられる作品。空気感、そして影とかすかな光・・・まるでフランス映画を見たような余韻に浸っています。
――レイチェル・チャン(ラジオDJ・バイリンガルMC&ナレーター)
冒頭の、時間と場に引き裂かれたかのような空の頼りなさげな姿からぐっと物語に引き込まれる。未だに空と海、望月の姿が刻印のように残る。3つの言語が融合するエンディングロールまで、映画の力に出会えた至福。
――デューイ松田(映画ライター)
心情を演じる日本俳優、コミュニケーションを演じる韓国俳優、存在を演じる中国系俳優。
これらが渾然一体となって『湖底の空』を構成していた。
――小林でび(映画監督・俳優)
常に過去が重しとしてのしかかり、無防備に生きることを許さない人物の心の色が、明るさを抑えた映像で表されているようで、見ていてなかなか胸が痛い。でも、終盤のバスのシーンが秀逸。ゆるし、開放、未来は明るく照らされる。
ーー川村夕祈子(キネマ旬報)